『めぐり逢えたら -最終部-』
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【朋美Side14】

そのまま、土曜、日曜と滝川さんが、私の家に泊まっていった。
体調を心配され、できるだけベッドで寝るようにと、他の事を色々としてくれた。

滝川さんが甲斐甲斐しく、こうして面倒をみてくれているのをベッドから見ていると
8年前、つき合っていた時の事を思い出す。

8年前も滝川さんは優しかった・・・
昔は、こうしているのが当たり前だった・・・

けれど、今は・・・。

滝川さんの優しさが辛い。

8年という月日は、かつての想いを過去の思い出に、側にいてくれた友人を想い人へと
変えてしまうだけの時間と重さがあった。



「お昼は、何食べられる?」

日曜の午後、滝川さんが遅めの昼食をどうするかを訊ねてくる。

「もう普通のもので大丈夫です。 すみません、もう起きられるから作ります。」

「いいわよ、今日までゆっくりしていなさい。
それじゃ、ちょっと買い物してくるわ。 おとなしくしてるのよ?」

「すみません。」

「じゃぁね!」

滝川さんが玄関から出ていく。

1人になった空間は、急に静まり返る。
弱ってしまった事で、心配で来て貰ったとはいえ、その優しさに甘えてしまっている事で
良心の呵責にさいなまれる。

もう体調も良くなったことだし、これきりにしようと思う。
たとえ優しくされても、自分の気持ちは変わらないし、ごまかせない。

部屋から窓越しに晴れた空を見ていると、しばらくして、ドアがガチャリと開いた。

すみません、お手数おかけして・・・、と玄関へ滝川さんを迎えに出ると
俯いて、思い詰めた顔をしている滝川さんが立ちつくしていた。

「ど、どうかしたんですか??」

「ごめんなさい・・・、悪いんだけど、これで今日は失礼するわ・・・。」

「あっ、えっ?? あっ、えっと・・・、滝川さん・・・、急にどうしたんですか?」

「ごめんなさいね・・・、今、マンションの出口で・・・、
 出口で・・・、今、早川さんと逢ったの・・・。」

目の前が真っ暗になる・・・。

ここで、滝川さんに逢ったということは、私の部屋に滝川さんが来ていた事を知ったのだろう。
私に申し訳なさそうに、目を合わさず俯いている滝川さん。

「そうですか・・・、いえ、いいんです。 気になさらないで下さい。」

この間の悪さ、これが私と和美との成り行きを物語っている気がする。
どう思われても、今更何も変わりはしない。

そう、何があっても、私の和美への想いが報われる事はないのだから。

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