『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side15】

「早川さん、朋美から伝言を預かっているの。」

「えっ?!」

思わず顔を上げてしまう。
朋美からの伝言、今日話をするはずだったが、それができなかった。

倒れるほど疲れやつれた朋美が私に何に伝えたかった事?

「メールを読んで欲しい、それから電話して欲しいって。」

「朋美が!??」

「えぇ、そう言っていたわ。」

メールは全て読んだ。
けれど、あのメールを読んだからこそ、連絡など出来るはずがなかった。

朋美をあそこまで追いつめたのは、私なのだ。

「解りました・・・。」

とりあえず返事をする。

「おれと、もう一つ早川さんに聞きたいことがあるんだけど。」

「なんですか?」

「あなた、どうして、朋美に会社を辞めることを隠していたの?」

突然、確信を突かれ、ドキリとする。

「べ、別に、隠した訳じゃないです。」

思わず、嘘を突いた後ろめたさから、目を逸らしてしまう。

「朋美は、あなたが会社を辞める事を知らなかったのよ。
あの子が、ショックで倒れたのは、その事が原因だと思っているんだけど。」

朋美がああなったのは、私が会社を辞めることを隠していた事が原因じゃない。
本当の原因は、私があの日朋美にした事、突然逃げた私の態度。

「多分違います。」

「でも、原因は、あなたではないの?」

「そ、それは・・・。」

何も答えられない。
これ以上の事は、何も言えない・・・。

「他に何か聞きたい事はある?」

沈黙を破り、私が何も答えないのを待ちきれなくなって、滝川さんがそう切り出す。

「いえ・・・。」

「それじゃ、そろそろ帰りましょうか。」

結局一口も紅茶に口を付けることがなかったまま、店を後にした。
今日は、きちんと自分の分は払い、タクシーで最寄り駅に降ろしてもらう。
家に着く間、ずっと朋美の事を考えていた。

家に着き、携帯のディスプレイに朋美の番号を出し、じっと見つめていた。

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