『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side13】

「あ、あの!! 滝川さんは、この間話しした時に、ニューヨークに行く前に振った恋人がいるって
 おっしゃいましたよね。 今でも、忘れられない、今でも好きな人がいるって・・・。」

唐突に切り出した話題に、滝川さんが一瞬驚くが、すぐに冷静な口振りで返事をする。

「あぁ、この間の事ね。
 えぇ、確かにこの間言った通りよ。 昔振った恋人の事、今でも好きよ。」

「そ、その・・・、
 その相手というのは・・・、私の良く知ってる人じゃないですか?」

今度こそ、滝川さんは驚き、目を大きく見開いているのが解る。
その表情から、私の頭の中で出した結論が、間違っていないことを確信する。
でも、本人の口から真実を聞きたい。

私は、驚きで口を閉ざしている滝川さんの返事を待った。

「お待たせしました。 こちら、ブルーマウンテン、こちら、ダージリンでございます。」

少し続いた沈黙の間を、ウェイターが頼んだオーダーを持って来たと同時に破られた。

私はじっと、滝川さんの目をまっすぐに見つめる。
私の強い視線に、後ろめたさがあるのか、耐えきれずに逸らす滝川さん。

運ばれたカップを持ち、一口飲み干したのと同時に、滝川さんが言葉を口にした。

「早川さん・・・、知っていたの?」

この一言で、やはり真実が私の想像と一致することが解ったけれど、
それでも、全てを滝川さんの口から聞きたかった。

「私がそう感じただけです。 でも、全てを話して下さい。
 滝川さんがそうおっしゃるってことは、そうなんですね・・・。」

はぁ〜っ、という小さな溜息と一緒に、滝川さんが全てを語りだした。

「あなたの想っている通りよ。
 私が別れた昔の相手は、松下さん。
 彼女とは、彼女が会社に入社してからすぐに、新宿の2丁目のレディースバーで知り合ったの。」

「新宿のレディースバー??」

「えぇ、私と松下さんは、ゲイ(同性愛者)なの。
 そういう人たちは、普段の生活では、パートナーを見つける事は難しい。
 だから、そういう出会いの場があるの。交流の場でもあるけれど。
 それが、新宿の2丁目。 あなたも聞いたことくらいはあるでしょ?」

確かに、そういう人たちが集まるところがあると、テレビか何かで耳にしたことがある。

「松下さんの配属は、隣りの課だったからすぐに顔を覚えていたわ。
 まぁ、好みだったこともあったからだけど。
 それから、しばらくして、、ある週末、ふらっとそのバーに入ると、
 1人でカウンターで飲んでいて、入れ替わり立ち替わり、ナンパされている子が目に入った。」

「それが、朋美??」

「そう、1人で来ているのだから、誘われているのを待っているのが普通。
 だから、いろんな人に声を掛けられているのに、見向きもしない。
 驚いたわ。 だから、そっと近づき、彼女に1杯ご馳走したの。

 その時、今までの人と同じように、断ろうとして私の顔をみると、
 朋美、一瞬にして固まったわ。
 会社の上司が突然いるんですもの、驚くわよね、普通は。」

昔を思い出し、懐かしそうに目を伏せながら滝川さんは話しを続けた。


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