『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side10】

12時半を過ぎた頃、診療所へと足を運んだ。
エレベータから降り、向かおうとした時、不意にドアから出てくる人影が目に入る。

先生?

先生が診療所から出てくるということは、朋美はもう帰ったのだろうか?
そんな疑問を抱きながらも、一応、訊ねて見ようと、診療所のドアに手をかける。
寝ているかもしれないと、そっと優しく静かにドアノブを引くと、部屋の奥から話し声が聞こえてきた。

誰かいる??

話し声に耳を傾けると、朋美の声と、もう1人の女性の声が耳に入ってきた。

誰?

気付かれないように、そっとドアを開け、中を伺う。

滝川さん?

朋美と話しをしている相手は、滝川さんだった。
滝川さんがどうして? 朋美とはあまり面識がないはずなのに??

そんな疑問が浮かんだが、何を話しているのかが気になり、話しの内容に耳を立てた。


「じゃぁ、どうしてそんなに苦しそうな顔をしているのかしら?」

「そ、それは・・・。」

「言ったはずよ、私は今でもあなたの事を諦めていないの。
だから、そんなに苦しそうにしているあなたを放っておけないわ。」

「そんな・・・。」

「好きな人が苦しんで、悲しんでいる姿を放っておける訳ないじゃない。
だから、何があったのか、話してくれる?」

「本当に何でもないです。 何でもないんです・・・。」

「うぅっ・・・、うぅぅぅ・・・。」

「朋美・・・。」

「我慢しなくていいから、苦しいなら泣いてしまいなさい。」

「うぁぁぁぁ・・・・。」

一体何の話し?? 滝川さんと朋美が今話していた事はなに??
頭の中が混乱している、諦めていない? 誰が、何を?
好きな人が苦しんでいるのを放っておけない??

ドアを挟み、誰が何を言っているのか解らなくなって、
部屋を除くと、滝川さんに縋り付いて泣いている朋美の姿が目に入った。

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