『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side8】

あっという間の出来事だった。
私の腕の中に倒れ込んできた朋美、声を張り上げ、助けを求めた後、すぐに来た診療所の医師、
脈と血圧を確かめた後、担架に運ばれる朋美。

途中、通りかかった滝川さんに問いつめられた言葉。

「今週、松下さん少し元気がなかったのよね・・・。 早川さん何か知ってる?」

今週元気がなかったという朋美。
あの日のことが原因なのだろう・・・。

私が朋美を追いつめた・・・。

その後、滝川さんに仕事に戻るように言われ、仕方なしに職場へ戻る。
朋美の容態が気が気でなかったけれど、課長から仕事の引継の件を言われる。

1週間休んだ事で、引継作業が遅れていた。
それを取り戻すかのように、朋美の事を今は考えないようにするかのように
集中して、新入社員の男性に作業の説明をした。

引継担当者へ、一通りの説明が終わり、彼に残りの作業を説明するために
必要な資料を書き出し、何の手順書が必要なのかをメモに書く。

書き出してみると、色々と作らなければならないものがあることが解る。
1週間で間に合うだろうか・・・。

来週・・・、来週で私はこの会社を出なければならない・・・。

会社に居られる時間が残り少ないことを、このとき改めて実感した。


午前が終わるチャイムがなり、昼休みに入る。

朋美は、まだ職場に戻ってこない。
突然倒れたのだ、戻っては来ないかもしれない。

病院に行ったのだろうか・・・、それとも、まだ診療所で休んでいるんだろうか・・・。

1人で家に帰ったのだろうか・・・。

心配になる。
携帯を取り出し、かけてみようかと思いながらも、何もできない。

コンビニで買ったパンをかじりながらも、頭の中では朋美の事だけを考えていた。

逢わせる顔がない、
けれど、朝、確かに朋美は私に何かを言おうとしていた、
手を伸ばして、頬に触れようとしていた。

何を言うつもりだったのか、
何を言いたかったのか。

あの時の朋美の瞳は、哀しげで、寂しげで、
心細そうな、不安を抱えた色をしていた。

不意に、届いていたまだ見ていない未読のメールの事を思い出す。
7通も贈られたメール。 何が書かれていたのか不安で開かなかったメール。

携帯を取り出し、恐る恐る受信ボックスを開く。
件名さえみるのが怖くて、受信ボックスさえみていなかった。

「えっ?!」

溜まっていたメールの件名は、朋美の切ない叫びのようなものばかりだった。

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