『めぐり逢えたら -最終部-』
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【朋美Side9】

滝川さんに全て知られてしまった。
けれど、今更知られた所で、和美は会社を辞める。
そう考えると別にもうどうでも良いことのように思えた。

「和美は会社を辞めるんです。 もう関係ありません。」

「じゃぁ、どうしてそんなに苦しそうな顔をしているのかしら?」

「そ、それは・・・。」

「言ったはずよ、私は今でもあなたの事を諦めていないの。
だから、そんなに苦しそうにしているあなたを放っておけないわ。」

「そんな・・・。」

「好きな人が苦しんで、悲しんでいる姿を放っておける訳ないじゃない。
だから、何があったのか、話してくれる?」

「本当に何でもないです。 何でもないんです・・・。」

滝川さんの優しい言葉が身に浸みる。
でも、和美のことは話せない。

涙があふれ出す。
滝川さんの優しさと、和美への溢れる想いとで、我慢できない。

「うぅっ・・・、うぅぅぅ・・・。」

堪えるように涙を堪えていると嗚咽が漏れる。

突然、優しい温かい温もりに包まれる。

「朋美・・・。」

滝川さんに優しく抱きしめられていた。

「我慢しなくていいから、苦しいなら泣いてしまいなさい。」

背中を優しく撫でられ、耳元で優しく慰められ、もう我慢できなかった。

「うぁぁぁぁ・・・・。」

泣いている間、ずっと滝川さんが優しく抱きしめ続けてくれた。

どのくらいそうしていたのか解らない。

「落ち着いた?」

「すみません・・・、みっともないところお見せして・・・。」

「いいのよ、でも、今日はもうこのまま帰りなさいね。」

「でも・・・。」

「早川さんと何か話すことでもあるの?」

「はい・・・。」

「そう・・・、でも、もう少しあなたの体が落ち着いてからにしなさい。
早川さんは、来週まで会社に来るのだから。」

「解りました・・・。 すみません、和美に伝えて欲しい事があるんですが・・・。」

「なに?」

「メールを読んで欲しい、それから電話して欲しい・・・と。」

「メールを読んでから電話するように伝えればいいのね。」

「すみません・・・。」

「構わないわよ、それじゃ、気を付けて帰るようにね。」

滝川さんにお礼を言って、ベッドから起きあがろうとしたとき、
タイミング良く、診療所の先生が戻ってきた。

「帰られますか? それじゃ、気を付けて。」

「お世話になりました。」

滝川さんと一緒に診療室を出て、そのまま更衣室へ向かってから会社を後にした。

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