『めぐり逢えたら -最終部-』
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【朋美Side8】

「気分はどうかしら?」

誰もいなくなった診療所の中で、滝川さんに優しく声を掛けられる。

「もう大丈夫です。」

「そう、でも、今日はもうこのまま帰ってゆっくり休みなさい。」

「はい・・・。」

「あなた、なにかずっと様子おかしかったけれど、どうかしたの?」

何もなかったように過ごしていたのに、滝川さんに見抜かれている。

「なんの事ですか? 別に何もないですけど。」

和美の事を知られる訳にはいかない。気付かれないように惚けて答えた。

「朋美、ごまかそうとしても無駄よ、私があなたの様子がおかしい事に気付かないとでも思っているの?」

やはり見抜かれている。 ずっと様子を見られていたのだろう。
ごまかしきれないとは思いつつ、他の適当な理由を探してごまかす。

「すみません、最近ちょっと疲れていたんで・・・。」

「そんなに、私に言いにくいことなのかしら。」

「えっ?!」

「単なる寝不足とか、疲れとかじゃない事くらい解るわよ。
 それだけ、やつれるほどの事なんて・・・、そうねぇ〜、あなたが想う相手に関する事かしら?」

「っ・・・。」

当たり前のように見抜かれてしまう。
どうして、この人は私の全てを見通してしまうのだろう・・・。
答えに詰まり、顔を背けてしまう。

「そう・・・、やはり、何かあったのね。」

「なんでもありません・・・。」

せめてもの抵抗。 和美の事を口にしたくない、知られたくない。
それから沈黙を押し通していると、はぁ〜と溜息をついて、滝川さんが言葉を発した。

「早川さん、ものすごく驚いてショックを受けていたわよ。」

「?!っ!!!」

顔を背けていたのに、和美の名前が聞こえたことで、顔を上げ滝川さんの顔を凝視してしまう。

「そう・・・、あなたの想う相手は、早川さんなのね。」

「な、なっ!!」

「それだけはっきりと態度に出されちゃ、イヤでも解るわよ。
それに、朝倒れたのは、数日振りに出勤した早川さんに逢った途端だったから。」

「か、和美は、何も関係ありません!!!」

「この間、ホテルのラウンジで話しした時、早川さんの話しが出た途端に、
 あなたの様子がおかしかったから、そんな気がしていたのよ。」

あっ!!

あの日、確かに和美が会社を辞めると聞いた途端に、不自然にその場を後にしたことを思い出した。

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