『めぐり逢えたら -最終部-』 |
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【朋美Side7】 うぅん・・・ うっすらと瞼を開けると、眩しい光が目に入り、思わずまた目を閉じる。 そっと、今度はゆっくりと目を開けると、見たこともない天井が視界に入る。 ここは・・・? 「気が付きました?」 突然横から声がした。 顔を向けると、白衣を着た初老の男性が立っていた。 「ここは?」 「診療所です。朝、会社で倒れられたので、こちらに運んだんですよ。」 そう言われて、この人が診療所の先生だということに気が付いた。 「今、何時ですか?」 恐る恐る聞くと、寝ている私の手を布団の中からとりだし、 血圧を測りながら、 もうすぐ12時半だと言われる。 倒れる前の事を思い出す。 朝、ロッカーで和美を見かけて、廊下に出て来るのを待った。 来た和美に声を掛けて、驚いている姿に近づき、そっと手を伸ばした所で意識が途絶えた。 そうだ、私は倒れたんだ・・・。 「少し疲れが溜まっていたみたいですね。 頭痛とかしませんか? 大丈夫ですか?」 「すみません、最近少し眠れなかったもので。」 「そうですか、それじゃ、今日はもう少し休んでから、帰られたほうがいいでしょう。」 「いや、でも・・・。」 「今日は、仕事は休んだ方がいいです。 所属長には、私から連絡しておきますから。」 「解りました・・・。」 朝からあんな騒ぎを起こしたのだ、職場に戻っても周りに心配を掛ける。 でも、和美と話ができない。 せっかく逢えたのに・・・。 コンコンッ 体を起こし、頭を落としていると、診療室のドアからノックの音が聞こえる。 「どうぞ。」 先生が声を掛けると、失礼しますという声と共に、滝川さんが診療室の中に入ってきた。 「松下さんの具合はどうですか?」 「あぁ、今目が覚めたようですよ。」 「少し、話をしても構いませんか?」 「ちょうど良かった、松下さんの様子を見ていて貰ってもいいですか? ちょっと病院から呼び出しがあったもので。」 診療所の先生は、本来務めている病院から呼び出しがあったようで、 滝川さんと入れ替わりに診療所から出ていった。 |
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