『めぐり逢えたら -最終部-』
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【朋美Side6】

何も気付かず、職場への入り口のドアノブに手を掛け、手を引こうとしている和美に
そっと後ろから声を掛けた。

「和美・・・。」

小さな声でしか呼べなかったけれど、和美には届いていたようで、
背中が一瞬ビクンと動いたと同時に、ドアノブから手を離して、和美は振り返った。

「と、朋美っ!?!!」

よほど驚いたのか、驚きと同様が入り交じった表情を和美は浮かべていた。

逢いたかった・・・
1週間、あの日から、ずっと逢いたかった・・・。

置き去りにされた悲しみと、やっと逢えた嬉しさが同時に込み上げる。
無意識のうちに朋美にそっと近づき、和美の頬に触れようと左手を伸ばす。

「和美・・・。」

和美・・・、

その手が頬に触れる寸前で、意識が突然遠のく。

和美・・・、
逢いたかった。

ただ、逢いたかった・・・。

自分の意志とは裏腹に、視界が薄暗くなっていく。

全身の力が抜けていく。

和美、やっと逢えたのに・・・

「と、朋美!! 朋美!!!」

遠くで、和美が私の名前を呼ぶ声がする。

全身の意識が途切れ、崩れ行く体が、何か温かく柔らかいものに包まれた。

温かい・・・。

それが最後で、意識が全て途切れた。


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