『めぐり逢えたら -最終部-』
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【朋美Side5】

和美との約束の朝、いつもと同じ時間に会社に会社に着く。

更衣室で制服に着替え始めると、いつもなら和美が更衣室へ入ってくる。
おはよう!といつも背中に声をかけてくれる。

いつもなら、何も考えずに、背中で和美が来ることを待っている。

けれど、今日は、本当に来るのか解らない。

緊張しながら着替えをしていると、更衣室のドアが開いた音がした。

和美??

でも、解らない。ロッカーから死角になっていて、ドア際が見えない。
じっと待っていると、着替え終わった人が更衣室を出ようとドアへ向かう。

「おはようございます。」

着替え終え更衣室から出ようとする女性の声。

「お、おはようございます。」

少し小さな声で、でも、聞き逃すはずのない、一番聞きたいと待っていた人の声が聞こえた。
待ち焦がれたその声に、体がビクリと反応してしまう。

和美・・・。

待ち焦がれていたことを気付かれないように、いつもと同じで
何事もなかったように着替えを続ける。

おはよう!

いつもなら、着替えをしている私の背中に、必ず和美が声を掛けてくれる。

けれど・・・

このとき、愛しい人からの言葉は何もなかった。

無言で自分のロッカーを開け、着替えを始める和美。
私の姿が見えなかったのか不安になり、顔をそっと和美の方に向ける。

何事もなかったように、無言で着替え始める和美。
私の視線に気付いているのか、いないのか。

少し離れたところから伺う和美の表情からは、何も読みとれない。
無表情に、ただ黙々と着替えをする和美。

今すぐ隣へいって声を掛けたい衝動をぐっと押さえ、
着替えを終えて自分のロッカーを閉じた。

いつもなら、着替え終わる和美を待ってから、一緒に職場へ行く。
けれど、今は和美になんらかしら声を掛けることをためらってしまう。

和美がどんな反応をするのかが解らないから。

ロッカーには、私たち2人だけではない。
他の人の目がある以上、和美と込み入った話はここではできない。

とりあえず、先に更衣室を後にした。

更衣室を出て、廊下で和美が来るのを待つ。

少しだけでも、話がしたい。

しばらくすると、更衣室から出てきた和美の姿が目に入った。

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