『めぐり逢えたら -最終部-』
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【和美Side4】

それから数日実家で過ごした。

父親は、戻ることについて、あれから何も言わなかった。
父親の退院を聞きつけた親類が快気祝いがてらにやってきては、家がにぎやかになり、父親も喜んだ。

「あら、和美ちゃん、久しぶりねぇ。」

父親の伯母さんに挨拶したとき、来月に実家に帰ることを伝えた。

「あら、和美ちゃんこっちに帰ってくるのね。 だったら、お父さんもお母さんも安心ね。」

「手の掛かる娘が戻るから、母にとっては迷惑かもですけど。」

そんな冗談交じりの話しを笑いながらしていた。

「でも、和美ちゃんがいつまでも1人じゃ、お父さんもお母さんも心配なんじゃないのか?」

途中会話に割り込んできた、伯父さんの一言で、
冗談で笑いながら話をしていた空気が、一瞬止まった。

「兄さん、和美は来月戻って来るばかりだから。 そのことは、今は別に。」

父親が話題を逸らすようにやんわりと私をかばってくれる。

「そうか? 和美ちゃん器量良しだから、その気があるなら、いつでも言ってくれればなぁ〜。」

伯父さんの口ぶりから、見合いを遠回しに進められていることに気付く。

「伯父さん、ごめんなさい。 今は戻る準備があるし、そのうち、落ち着いたら相談します。」

「おう、そうかそうか。 それじゃ、その気になったらいつでも言ってくれ。」

結婚とか見合いとか、そんな事、考えたくもない。
というか、今この気持ちのままで、そんな事を考えられる訳もない。

「お兄さん、この子、結婚なんてとんでもない!
家事らしいことなんて、何もできないんですから。
このままお嫁に出すなんて、我が家の恥になります!!」

母親の機転で、一瞬にして笑い声がどっと沸き、その場が和やかな空気に戻る。

笑いながら、一瞬脳裏に結婚という文字が浮かぶ。

父親も、母親も、心の底では私が結婚することを望んでいるんだろう。
独身で、女1人で生涯過ごすつもりなんだと話せば、心配し、不安に思うに違いない。

両親だって普通の親なのだから、世間の幸せ像と同様に、
結婚し、新しい家庭を築き、子を成して欲しいと思っているだろう。

普通の親なら、子供にはそうあって欲しいと思うに違いない。
けれど、私はそんな両親の期待に添うことができない。

それだけで、両親の想いを踏みにじってしまうような、親不孝をしているような、
そんな後ろめたさを感じる。

けれど、結婚が愛する人との家庭を築くものであるのなら、
私が心から望む相手と結婚することは、叶わない。

今心から想う相手は、朋美1人で、例え想いが通じた所で、結婚することができない同性なのだ。

ふっ、と自嘲の笑みがこぼれる。
何が、例え想いが通じた所でだ・・・。
想いが通じるところか、相手の事を考えずに踏みにじった自分の身勝手さに呆れる。

親戚が帰った後、居間で父親に、兄さんの言うことは気にするなと、笑顔で言われた。
父親の気遣いと、両親の想いに答えられない後ろめたさで胸が軋んだ。

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