『めぐり逢えたら -最終部-』 |
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【朋美Side3】 「松下さんは、和・・・、早川さんと親しいよね?」 「はい。」 「僕たちが別れた事、詳しく早川さんからは聞いてなかった?」 「和美は、しばらく別れた事も言ってくれなくて。 知ったのは、半年くらい過ぎた後でした。」 「そうなんだ・・・。」 「はい・・・。」 「早川さんは、元気にしてる?」 不意に、今の和美のことを聞かれ、胸がズキンと一瞬痛みが走った。 「え、えぇ、元気は元気なんですが・・・、和美は、今月で会社を辞めるんです。」 「えっ?! そうなの? そっか・・・、辞めるのか・・・。」 「勝村さん??」 「あっ、ごめんごめん。 そうそう、僕たちがどうして別れたっていう話だったよね。」 「はい・・・。」 「早川さんが何も言わなかったことを、僕が口にしていいか解らないけれど、 会社を辞めると言うなら、もう時効で話してもいいかな。」 「・・・。」 「早川さんには、昔からずっと好きな人がいるんだ。」 「えっ?!」 「ずいぶん長い事、想っているようでね。 でも、その相手には、他に強く想う人がいるみたいで、想いが叶うことはないらしい。」 「そ、、そんな・・・。」 「早川さんは、その相手を忘れるつもりで、僕とつき合ったみたいだけど、 やっぱり、忘れられなかったようでね。結局僕は振られたんだ。」 和美に想う相手がいる。 しかも、随分前から。 知らない、そんなの和美の口から聞いたことがない。 頭の中で、理解できない激しい動揺が、大きなうねりになって暴れ回る。 「今も一人でいるところを見ると、まだその人の事、想っているんじゃないかな。」 勝村さんの最後の一言を聞いた瞬間、脳裏に偶然目にして、忘れていたものが浮かび上がる。 ”いつか、想いが届くこと、幸せになることを心から願って” 表には、天使が描かれ、丁寧にかかれた文字とは裏腹に、 手で雑に折られてゴミ箱に捨てられていた1枚のクリスマスカード。 机の隅においてあった、自分宛だと思った小さな紙袋に入った小さな箱。 別々の布団で寝るようになったクリスマスの夜。 少しの不安をうち消すように、寝ぼけたフリして抱きついた朝。 クリスマスに浮かび上がった小さな不安を打ち消すように 初日の出に願いを掛けた夜明け。 猛烈な勢いでフラッシュバックしていった少し前の出来事。 和美に想い人がいる。 今まで、どうしてそう考えた事がなかったんだろう。 私が、次々につき合っていた相手を変えていた時も、 酔いつぶれて、全てをうち明けてしまった、あの夜も、 熱を出しても、初日の出が見たいと我が儘を言った時、そっと起こしてくれたあの朝にも 和美は、心の底で、静かに想いを寄せている相手がいた。 |
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