『告白』
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「奈美が男だったら、絶対に恋人にするのになぁ〜」

ねぇ、知ってる?
その言葉で、どれだけ私が苦しんでいるのか。
優しさで言ってくれるその言葉で、私がどれだけ傷ついているのか。

お願い。
これ以上優しい言葉をかけないで。
じゃないと、私の気持ちが救われないから・・・。



= 告白 =

【奈美Side】

「奈美、改まって話しってなに?」

私は有希を屋上に呼び出した。

「ごめんね、わざわざ呼び出したりして。」

「別にいいよ。 明日からやっと夏休みだね♪
 学生最後の夏休みだし、なんかどっか、ぱぁ〜っと遊びに行きたいよね。
 ねぇねぇ、奈美はどこか行きたいところある?」

私の気持ちとは裏腹に、無邪気に笑う有希の顔をみることができず、
私は屋上から見える外の景色に目を向けていた。

私がいつもの様子と違うことに気付いた有希の顔から笑顔が消え、
不安そうな表情を浮かべながら私の顔をのぞきこんでくる。

「奈美? どうしたの? 何かあったの?」

有希にそんな顔をさせたくない。
だけど、今から話す事を考えると、私の表情は緊張と不安でさらに歪んでしまう。

真剣な有希の眼差しが耐えきれず、私は背を向け、覚悟を決める。

「有希、前から冗談交じりに、私が男だったら恋人にするって言ったりしていたじゃない?」

「えっ? 急になに?」

突然何をいいだしたのだろう?という驚きの表情をしていることは背中越しでも容易に解る。

「あのね、そう言われるたびに、私はとても辛かったんだよ?」
「辛かった? えっ? なにが??」

やっぱり、解る訳ないよね。 私は思わず苦笑する。

「あのね、そう言われるたびに、自分が勘違いしそうで辛かったんだ。」

私は正面に体を向き直し、驚きの表情を浮かべたままの有希を見つめて言葉を続ける。

「本気で有希の事が好きな私にとって、有希のその言葉は、とても残酷だったんだよ。」

「えっ? えーっ?? な、奈美、一体、何を?」

有希が激しく驚き、動揺している。 私はかまわず、いままで言えなかった想いを口にする。

「有希の事が好きなの。 友達になった時からずっと。」

「えっ? そ、そんな・・・。」

「有希は、私の事、どう思ってる?」

私は有無を言わさず、答えを求める。 考える時間を与えず、本音を出させるために。

「な、奈美は、私にとっては、大事な友達で・・・、親友で・・・。」

「そんな事は聞いてない。 私のことを好き? 嫌い?」

私は有希に近づきながら、さらにはっきりとした答えを求める。

「そ、そんな事いわれても・・・、す、好きだけど・・・、それは友達としての・・・。」

嫌いではないという事を確認した上で、言葉を濁している有希の肩を力強く屋上の柵に押しつける。

「きゃぁっ!」

悲鳴を小さくあげる有希の無視して、強引に顔を正面に向かせ、強引に唇を奪った。

「んっっ!! い、いやぁっ!!!」

バシッッ!!

左頬に火花が散ったような熱い痛みが走る。
反動で、よろけて体が一歩後ろに下がる。
涙を浮かべた有希が私を潤んだ瞳で見つめている。

解っていた、こういう結果になることは。
それでも・・・、どうしても、どうしても伝えたかった。

体に全身の力を込め、私はその場を走り去った。

「な、奈美!! 奈美!!!」

背中越しに有希の叫び声が聞こえる。
無視して、私はその場を離れた。

夏休みに入った翌日、私はその地を離れた。


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