『いつか、あなたの隣りに -浅野Side-』 |
<<TOPに戻る |
(ん・・・・、んん?) 再びゆっくりと意識が目覚めた。 よほど深い眠だったのか、睡眠不足を十分に補えたようで、スッキリと目が覚めた。 目覚めと共に、視界に入ってきたのは、真っ黒な髪の毛。 そして、体中になにやら柔らかい感触がまとわりつき、柔らかい感触へ腕を回している。 (こ、これは??) 静かに回していた腕をはずし、ゆっくりと体を離すと・・・ (?!?!!!) 私が抱きしめていたのは、森田さんそのものだった。 (私はもしかして、一晩中森田さんを抱きしめて寝ていたの??) そんな現実に思考が向くと、顔に血が上り、赤らんでいるのが自分でも解った。 (えぇーっと・・・、あぁ、思い出した。 寝る前に森田さんが泣いたんだったわね。) 徐々に冷静にそうなった経由を思い出す。 何もあるハズはないのに酷く動揺した自分が少し可笑しかった。 森田さんを起こさないように、静かにベッドから体を起こす。 横では、安心しきって幸せそうな顔をして、彼女がぐっすりと眠っていた。 (少しは落ち着いて寝れたかしら?) 彼女の目元に被さっていた髪の毛を、手を伸ばしてそっと除けた。 ふと、寝ている間に感じた心地よい感触を思い出す。 ずっと一人で過ごしてきた。 いつも、一人で夜を過ごし、寝るときは自分の体温がベッドに取られる気がしていつも寒かった。 仕事のプレッシャーやストレスで、どれだけ眠れない時間を一人で過ごしてきただろう。 心地よい眠りにつく為に、広くて最高級の寝心地の良いベッドを買い求めた。 それでも、ぐっすりと眠れる日は、数えるくらいしかなかった気がする。 なのに、今日は短い時間でぐっすりと眠れた。 誰かが傍にいてくれるだけで、これだけベッドが暖かくなった事に驚いた。 誰かを抱きしめて眠ることが、こんなにも心地よく、安らげる事だとは思わなかった。 (この感触を覚えてしまったら、もう2度と独り寝できなくなりそうね・・・。) 自嘲気味に笑みがこぼれた。 でも、こうして彼女と一つのベッドで寝る事はもうないだろう。 ましてや、抱きしめながら寝る事など。 もう、森田さんの幸せそうな寝顔を見ることはないだろうと思うと 何故だか少し名残惜しかった。 彼女の髪を指で優しくなぞりながら、静かに彼女の寝顔を見入った。 ふと気が付き、時計を見ると、11時を回っていた。 森田さんを起こさないように、静かにベッドから出て、パジャマの上から部屋着用の上着を羽織る。 リビングへ行き、濃いめの珈琲をドリップして淹れる。 玄関へ新聞を取りに行き、リビングでテレビをつけ、珈琲を飲みながら読む。 一通り新聞に目を通した後、シャワーを浴び、着替えてリビングに戻ると12時を過ぎていた。 |
次のページへ>> |