『いつか、あなたの隣りに -浅野Side-』
<<TOPに戻る
「そこに座ってゆっくりしていて。 何か飲む?」

「あっ、いえ、そんなお構いなく。」

初めての部屋に入って、森田さんが緊張しているのが解る。
まぁ、彼女にしてみれば、あまり深く関わった事がない上司の部屋に
無理矢理連れてこられたのだから仕方ない。

(私はずっとあなたの事を見ていたから、別に違和感はないのだけれど・・・。)

珍しそうに、落ち着かなそうに部屋のあちこちを凝視している森田さんの姿が可愛らしく思えた。

「もう4時ね。 シャワー浴びる?」

「あっ、いえ、いいです。」

「そう。 それじゃ、ベッドの支度してくるから、少し待っていてね。」

「あっ、ベッドなんていいです。 このソファーで寝かせてもらえば十分です。」

「何言ってるの。そんな所で寝ると、風邪引くわよ。 あと、私のスウェット持ってくるからそれに着替えなさい。」

自室へ戻り、私の着替え用のスウェットを取り出す。

(あっ、そういえば来客用の布団は、クリーニングに出したままだったわ。)

来客用に布団一式用意していたけれど、あまり使う事がないのでつい最近
干す変わりにクリーニングに出したのを思い出した。

(仕方ない、ベッドに一緒に寝ればいいわね。)

当初は、隣りの客間に布団を敷いて彼女に寝てもらうつもりだったけれど、
仕方ないので、自分のベッドに一緒に寝てもらうことにする。

(どうせ、このベッドなら2人くらい一緒に寝たって問題ないわ。)

新しい枕を出し、布団とシーツを整えながら、森田さんに客用の使い捨ての歯ブラシを使うように声を掛ける。
彼女が歯磨きを終え、着替え終わったころを見計らって、寝室へ呼ぶ。

「あ、浅野さん・・・、あ、あの・・・、浅野さんは、どちらで寝られるので・・・。」

「一緒のベッドだと寝れない? キングサイズだから2人でも寝れると思ったんだけど。」

客用の布団一式クリーニングに出してないのを忘れていた事を説明するのが面倒で省略する。

「あっ、いえ、そ、そ、それだと・・・。」

(一緒のベッドで寝るっていうのは、流石に抵抗があるかしら・・・?)

「森田さんが寝にくいなら、私がリビングで寝るから。」

彼女を私が呼んだのだから、彼女が遠慮するのであれば、私はリビングのソファーでもいいと思った。

「あっ、いえ、そ、そんな!! それなら、私がリビングに寝ます!」

「あなたがリビングに寝る必要はないわ。 それなら一緒でいいわね。」

「あっ、えっ、えっと・・・。 はい。」

(ちょっと、強引だったかしら?)

そんな後ろめたさを少し感じたけれど、私も疲れているので、
できればソファーで寝るの勘弁してもらいたかったこともあり、やや強引にベッドで寝る事を押し通す。

「電気消すわよ。」

彼女が緊張しながらベッドに入ったのを確認して、部屋の電気を消した。

次のページへ>>