『いつか、あなたの隣りに』
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眠れない・・・。

静かすぎることと、柔らか過ぎる高級ベッドの寝心地の感触に戸惑っていた事と、
隣りに浅野さんが寝ているという事実に頭が緊張してしまう。

こんな事になるなんて想像できなかったけれど、これは自分のミスが原因で、そして浅野さんに
多大な迷惑を掛けてしまった結果だと思うと、自分の不甲斐なさに涙がこみ上げてくる。

寝ている浅野さんに気付かれないように堪えるけれど、自分の情けなさに悔しさがこみ上げてしまい
嗚咽を必死に堪えても、少しずつ声が漏れてしまった。

「どうしたの? 眠れない?」

浅野さんを起こしてしまった。

「い、いえ、大丈夫です。」

泣いているのを気付かれないように、堪えて答える。 でも、無理して出した声で結局ばれてしまった。

「どうしたの、何泣いているの? 今日のことを気にしているの?」

肘を付いて体を起こした浅野さんは、暗闇の中、私の目元に指で触れながら涙を拭き取る。

「わ、私・・・、今回の事は、私自身のミスで、浅野さんに一杯迷惑を掛けてしまって。
 そ、その・・・、自分が不甲斐なくて、自分が情けなくて、悔しくて・・・。」

自分で自分の気持ちを打ち明けると、涙が更に溢れてしまい、涙声でどもってしまう。
みっともない姿を晒してしまっているのに、涙が止まらず、悔しさがこみ上げて感情が止まらない。

不意に頭を撫でられ、そして、ゆっくりと頭が優しく何かに包まれた。

「誰だって完璧ではないわ。 わざとした事ではないし、失敗は誰にでもある。
 問題なのは、失敗した後、自分が何をしたら良いのか、何をすべきなのかを考えることよ。」

 私の頭に浅野さんの腕が回され、抱えられるように、浅野さんの胸元に抱きしめられていた。

「私は昼間に、あなたのできることをしなさいと言ったわ。 それは、やるべき重要な事を判断して、
 最優先にしなければならないことをまず進めなさいという意味だったのよ。

 あの時点では、設計書はほとんど手をつけられていなかったけれど、文書は他の人に頼もうと思えば出来るわ。
 あの時、あなたがすべき事は、プログラムを完成させること。 あなたはそれを一所懸命にしていたわ。

 まぁ、不具合の修正には経験が必要だから時間がかかってしまったようだけど。 でも、あなたは私の指示通りに
 仕事を進めていてくれた。 それで十分よ。

 今回の事はあなたにとって良い勉強だったと思う。 だから、あなたはもっと伸びるわ。 安心しなさい。」

頭を優しく抱きしめられながら、頭を優しく撫でられながら、耳元に聞こえる浅野さんの声を聞いていると
許されたようで、励まされているようで、違った意味で泣きたくなった。

「っ、えっぅっ・・・えっっくぅ・・・。」

泣き続ける私の背中を優しくさすってくれた浅野さんの手が心地よくて、私はそのまま眠りに落ちた。

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