『いつか、あなたの隣りに』
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初対面の印象は最悪。 話はいつも平行線。
これ以上、この人とかかわるつもりなんてなかったのに。
なのに、どうして・・・。

あの日から、気が付けば目で追ってしまう。
姿を目で探してしまう。

あの人は、私の上司なのに・・・。 あの人は私と同じ女性なのに・・・。




『いつか、あなたの隣りに』



「森田さん、例の企画書、明日の昼までに私に提出して。」

「えっ! 企画書は今週中じゃないんですか?」

「最終提出が週末なのよ。 その前に私の方で中身をチェックするから明日の昼に欲しいの。」

「すみません、今日は他の業務処理があるので、ちょっと手がつけられなく・・・」

「とにかく、明日の昼までによろしく。」

「えっ! ちょ、ちょっと!! 浅野さん!!」

上司の浅野さはいつも私の仕事状況を知らずに、無理難題ばかりを言う。
私の話はいつも取り合ってくれず、何を言っても、浅野さんは自分の考えを曲げない。
上司たるもの、このくらいの信念があるのが当たり前?という意見もあるのだけれども、
それにしたって、少しくらいは部下の状況を考慮すべきだと思う。

少し前なら、この浅野さんのやり方に喰ってかかり、喧嘩腰の言い合いになるのだけれども。
でも、この間のあの日のことがあってから、私は浅野さんのことを悪く思えなくなってしまった。

気が強くて、強引で、かかわりたくないほどに避けていた人だったのに、
今では、無意識に職場で姿を探してしまったり、背中を目で追ってしまったり。

あぁ〜! もう!! 一体なんなのよ!! この落ち着かない気持ちは!!
何度も何度も考えたのに、出る答えは自分では絶対に認めたくないことで。

だって、浅野さんは私と同じ女性で、その浅野さんのことを私が意識してるなんて
まるで恋してるみたいなんて、認められる訳がない。

私は、いままでそんな同性に対して、恋愛感情を持ったことなんてないし、
恋愛対象はずっと男性だったから、この気持ちを恋愛感情だなんて考えられないし、考えたくない。

でも・・・、だけど・・・。
出張で不在なだけで気持ちが沈んでしまったり、仕事のことでも、話し掛けられるだけで
心が一跳ねするのがわかる。浅野さんの一言に一喜一憂してしまう。

土日会えない時は、無意識に何をしているのかと考えてしまう。

こんなの、おかしい。 私は一体どうしてしまったんだろう。
このままじゃ、どんどん私はおかしくなってしまうんじゃないか・・・と不安で仕方がない。
全てはあの日・・・、あの日に、浅野さんの本当の姿に触れてしまったから。

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