『 初恋 -西原side-
<<TOPに戻る

私は鞄の中のインスタントカメラを探した。 卒業式に部活仲間や友達と一緒に撮ろうと思って
持ってきたカメラ。まだ何枚かフィルムがあまっていたはず。

あった、カメラを見つけて、私は友達のところに行って、写真を撮ってくれるように頼んだ。

振り返って、坂本さんに声をかけようと思った時、彼女は背を向けて帰ろうとしていたので
慌てて肩を掴んで、声を掛けた。

「記念に一緒に写真を撮ろう!」

私がそう言うと、坂本さんは顔を上げて、驚いた顔した後で、また泣き出してしまった。

「ほらほら、泣き顔で写真撮ると、後で見た時恥ずかしいよ?」

彼女は泣いていたけれど、それがなぜか嬉しく感じてしまって、気持ちが落ち着くのを待った。
泣いていた後だから、目が赤く腫れていたけれど、少し落ち着いて笑顔を見せてくれたので、
私たちは2人並んで写真を撮ってもらった。

カメラを前にして、坂本さんは最高の笑顔をカメラに向けていた。私はその笑顔に見とれてしまった。

「写真できたら、送るからね。」

そう言って、私は坂本さんと握手をした。その手は小さく、かわいらしい手だった。
握った手を一瞬離すのが惜しく感じてしまったけれど、我慢して何事もなかったように笑顔で別れた。






数日後、卒業式で使ったカメラを現像して、坂本さんと一緒に写った写真を真っ先に確認した。
2枚撮った写真のうち、1枚は、私が彼女の笑顔に見とれてしまい、
カメラとは見当違いな視線を送っている写真になっていた。

『ありゃ、さすがに坂本さんに見とれてる写真はまずいよねぇ・・・。 でも・・・。』

2人でカメラに向かって写っている写真より、こっちの方が卒業式のこの時の雰囲気を
そのまま表してる。 坂本さんがが私に憧れてくれていた事を伝えてくれたのだから
私も、坂本さんの事を気にしていたことを伝えたくなって、この写真を彼女に送ることに決めた。

生徒名簿で彼女の住所を調べて写真を送る。 写真だけではなく、短い手紙を入れて封をした。


「坂本 裕美様

 卒業式の時、声を掛けてくれてありがとう。 本当に嬉しかったです。
 私のこと、見ていてくれてありがとう。
 部活では、話す機会がなくて、今思うと残念だったなって思っています。
 憧れてくれてありがとう。 私も坂本さんの事、いつも見ていました。
 最後に中学生活の素敵な思い出をありがとう。

 この間の卒業式の写真を同封して送ります。
                                  西原 香織」


次行っとく?>>