『 初恋 -西原side-』 |
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卒業式が終わり、在校生に見送られた後、ホームルームを終え、教室を後にした。 教室を出ると、友達に言われた通り、知らない後輩から呼び止められる。 ボタンをください・・・、とか、一緒に写真お願いします・・・、とか。 部活の後輩ならともかく、全く面識のない子(しかも女の子)に言われると、複雑な気分。 なんで、女の子に呼び止められるんだろう? だからといって、男の子に言われるともっと困るけど。 制服のボタンは3つとも無くなり、写真に写ったのは4〜5回だったと思う。 写真あとで送りますって言われたけれど、別にいいからと丁重に断る。 知らない子と写った写真を送られてきても困るだけだったから。 やっと卒業恒例の儀式?から解放されて、校門の前で、友達とゆっくり話しをする。 春休みにどこに遊びに行こうか!と、話しをしていると、誰かに声を掛けられた気がした。 はぁ〜、またか・・・、と思って振り返ると 「西原先輩・・・。」 坂本さんが私の後ろから声を掛けてくれていた。 「ごめん、ちょっと部活の後輩と話ししてくる。」 突然の事でびっくりしたけど、私は友達に慌てて説明をして坂本さんのところへ歩み寄った。 「なに?」 嬉しさのあまり、無意識に笑顔で声をかけていた。 「そ、卒業おめでとうございます。」 彼女は顔を赤らめ、そういうと、うつむいてしまった。 「わざわざ声をかけてくれたのね。 ありがとう。」 結局あまり話しをする機会がなくて、親しくなることもなかったのに、 わざわざそれだけを言いに声をかけてくれたのが嬉しくて、さらに顔がほころんでしまった。 なのに、彼女はそのままうつむいてしまっている。どうしたのだろう? そう思ってうつむいた坂本さんの顔をのぞき込もうと屈み、 「どうしたの?」 と声をかけた。 俯いていた彼女は一筋の涙を流していた。 私は驚いたけれど、それと同時にその泣き顔が不謹慎ながらもかわいいと思ってしまった。 その直後、 「せ、先輩・・・。 ずっと、ずっと憧れていました。」 坂本さんは声を振り絞るように呟いた。 とても、とても小さな声だったけれど、私にははっきりと聞こえた。 嬉しかった。 私の事を見ていてくれたのが、憧れてくれていたのが。 呟いた後、彼女は少し震えながらそのままずっと下を向いたままだった。 |
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