『 初恋 -西原side-
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「!? !!!」

人って驚くとこんな顔になるのかな?と思うくらいに、
その子は、目をまん丸くして、竹刀を握ったまま固まっていたから、思わず吹き出しそうになった。

かわいい〜。

上級生にいきなり指導される事に緊張しているのか、全身に力が入っているのが解って、
かわいらしい顔なのに、口をへの字にして力んで見てると、思わず顔がにやけてしまう。

いけない、いけない。

この子は緊張しているのだから、もっと力を抜いてもらわないと。

竹刀を振りかぶっているときの姿勢を正す為に、その子の肘と背中に手を掛けて
姿勢のポイントを説明する。

「振りかぶった時は、肘の力をできるだけ抜いて大きく振りかぶって、背筋をまっすぐ伸ばして。」

顔を近づけて説明をしていると、さらに緊張してしまったのか、その子の耳が真っ赤になっているのが
わかった。こういう初々しさがなんともまたかわいく思えてしまう。

ジャージの背中に書いてある名前を見ると、『坂本』と書いてある。

(この子の名前は、坂本っていうのか・・・。)

この指導をきっかけに、10人いる1年生の中で一番始めに坂本さんの事を覚えた。

その日から、何度か指導をする日があった。
坂本さんだけじゃなく、もちろん持ち回りで他の1年生を教えることもあったけど、
他の子から感じる視線は、羨望の眼差しっていうか、期待に満ちた目で
私の指導を受けている気がして、少しやりづらかった。

だから、他の子を指導している時に、友達に指導を受けている坂本さんがどんな表情を
しているのか気になって、つい目で追ってしまう。
友達から指導を受けている時の坂本さんは、緊張というよりも熱心に指導を聞いている
真面目さが離れたところから見ていても伝わってきた。

他の日にまた坂本さんを指導すると、おかしいなぁ〜、また緊張で全身が堅くなってる。
友達が指導しているときは、こんな表情しなかったと思うんだけど・・・。

私が見ている事に緊張しているのか、目を合わせてくれないし。
顔がなんか赤い気がするし。私にだけ緊張するのかな? なんでだろう?

でも、その恥ずかしそうな顔が、見れば見るほどやっぱりかわいい。

いけない、こんな風に思っちゃ悪いよね。

坂本さんは、真っ直ぐな綺麗な髪を肩につく程度に伸ばしていて、見るからに女の子らしい雰囲気。
背は小柄なんだけど、目が大きく、くりっとしていて引き込まれそう。
きっと、クラスでモテるだろうなぁ〜なんて、部活中にも関わらず、変な想像をしてしまった。


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