『 Dummy:ダミー』
<<TOPに戻る


久美と篠崎先輩の関係を2人から打ち明けられて、思いこんでいた誤解が解けてから1週間すぎた頃、
ふと、久美の中からいつもと違う雰囲気を感じた。
何が違うかと言われると、困るのだけども、なにかが違うのだ。

「ねぇ、久美?」

「なに?」

最近、すっかり2人でお気に入りになった屋上でのお昼を食べ終えて、私はさりげなく切り出してみた。

「久美さぁ、何かあった?」

「えっ? なんで?」

「いや、なんとなくなんだけど、いつもとなんか違う気がするから。」

「そんなことないよ? ケイの気のせいだよー。」

そういって、笑顔を向ける久美の顔はいつもと同じ。
私の気のせいなのかな・・・? 久美がそう言うことで、その場はそう思うことにした。


それから、数日が過ぎ、最初は気のせいだと思っていたけれど、日にちが経つにつれ、
感じていた違和感が確信に変わった。 でも、久美に聞くと、何もないの一点張り。

何かがあったのは間違いないと思いつつ、久美からそれを打ち明けられない事が今度は心配になる。

私に言えないこと? 篠崎先輩の事さえ打ち明けてくれた久美が、それ以上に言えない事がある?

拭えない不安が自分の心の中をどんどん浸食していく。

そんな不安を抱えながらも、久美に深く聞けずにいたある日、篠崎先輩から短いメールが入った。

“久美に最近変わった所がありませんか?”

やはり、篠崎先輩も久美の様子がおかしいと気が付いている。
篠崎先輩にも言わない事を、私が知るはずもない。

“私も久美の様子がおかしいと思っていて、何かあったのかを聞いているのですが、
何もないと一蹴されてしまいます。 何か心当たりありませんか?“

そう返信をして、しばらくしてまた篠崎先輩から返事が入る。

“久美は僕にも何も言いません。 何か解ったら教えてください。
僕も解ったら連絡します。 久美をお願いします。“

解りましたとだけ返事を入れる。
久美の身に一体何が起きているのか・・・、なんとしても調べてみせる。
それから、一層久美の様子を細心の注意を払って伺う事にした。


更にそれから数日後、久美の様子がおかしかった理由が判明した。

久美の様子がおかしかった理由。
それは、篠崎先輩を慕う上級生や同級生から、嫌がらせや脅迫まがいをうけていた事だった。

授業の間の休み時間に、次の教科で使う教科書を忘れ、久美に借りに行った時、
見知らぬ上級生2人に久美が呼び出しされていたのを目にした。

その雰囲気が尋常じゃないので、その後をつけていくと、上級生用の女子トイレに入っていった。
気付かれないように距離を取って様子をうかがうと、突然トイレの中から、パーンっ!と
はじかれる事が聞こえた。

嫌な予感が走る。 上級生用のトイレと解りつつ中に踏み込むと、久美の左頬が赤く晴れているのが目に入った。

次のページへ>>