『 Dummy:ダミー』
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2人に顔を見つめられいるのが辛くて、思わず視線を逸らしていると、篠崎先輩がゆっくりと口を開いた。

「吉沢さんは、何か誤解されているようですが、僕と久美はお付き合いをしている仲ではありません。」

一瞬、何を言われているのか解らなかった。

「はぁ? えぇーっと、おっしゃってる意味が分からないんですけど。」

「ですから、久美と僕はつき合っている訳じゃないんです。」

先ほどからの笑顔は変わらず、篠崎先輩はゆっくりと答える。

「えっ、で、でも・・・、こうして、連絡を取り合ってるじゃないですか・・・。」

それに、この間、篠崎先輩の背中に久美が抱きついた所も見た。
篠崎先輩の腕に絡みつき、そんな久美に優しい笑顔を向けて、頭を撫でていた所も見た。

何を今更ごまかそうとしているんだろう?

「それはそうですが、これには事情がありまして・・・。」

「ごまかさないでください! それ以外、どんな関係があるって言うんですか!!」

話をはぐらかされているような気がして、思わず強い口調で篠崎先輩に噛み付いてしまった。

「け、あっ、メグミ! お願い、話をもう少し聞いて。」

久美に声を掛けられ、ハッとする。

「すみません。」

「あっ、いや、いいんです。 ちゃんとお話しますから。」

優しい笑顔を崩さず、篠崎先輩は話を続けた。

「実は、僕と久美は実の兄弟なんです。」

キョウダイ? 兄弟? 

「はぁ??」

中学から一緒だった久美に、お兄さんがいるなんて聞いたことがない。

「く、久美! お兄さんがいるなんて聞いたことないよね!!」

思わず久美に詰め寄る。

「ごめん、実は事情があって、お兄ちゃんがいることは、秘密だったの。」

「ひ、秘密??」

「久美と僕の両親は、僕が中学生、久美が小学生の時に離婚したんです。」

「離婚? 久美のお母さんは病気で亡くなったって聞いていたけど。」

「ごめんなさい。お母さんはお兄ちゃんと一緒に家を出ていったの。
ただ、離婚を期に引っ越してきたばかりで、近所の目もあって、そう言うことにしていたの。」

「そうだったんだ・・・。」

「僕の母は、今の父と再婚をして、僕は父の跡取りとなりました。
しかし、会社の社長である父の立場を悪くする訳にはいかず、僕が母の連れ子であることは秘密なのです。」

「それで、久美と兄弟であることを隠していたんですね。」

「はい、2人でやっと逢えるようになったのは、ここ最近の事です。お互い両親の目がありますから。」

一瞬寂しそうな目をして、篠崎先輩は苦言を口にしていた。

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