『 Dummy:ダミー』
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次の日は学校へ行った。 朝、久美に会うのは辛かったけれど、全神経を使って、いつものフリをした。
いつもと変わらぬ私の態度に、逆に久美が少し緊張しているような気がした。

「久美、心配かけてごめんね。」

「もう体調いいの?」

「うん。 本当にごめんね、2日もうちに来てくれたみたいで。」

「こっちこそ、具合が悪い所に押し掛けちゃってごめんね。」

「いやいや、こっちこそ寝こけてごめん。 あっ、電車が来た、急ごう。」

久美に篠崎さんの話しを切り出される前に、話題を出来るだけ逸らすようにした。
朝からその話しは聞きたくなかったから。

「ね、ねぇ、ケイ。」

「なに?」

「あのね、今日、お昼にまた屋上で食べない?」

ドキン・・・。
屋上で、あの話しをされるのか・・・。 そう思うと胸が軋む。

「あっ、あのさ、私2日間学校休んでたじゃない? だから、昼休みは2日間の
 ノートを友達に見せてもらおうかって思っていて・・・。」

往生際が悪いって自分でも解ってる。 でも、昼休みにそんな事を聞いたら、どうにかなってしまいそう。
話を聞く時間をこれ以上延ばしても、何も変わらないのに、それでも、聞きたくないと逃げてしまう。

「あっ、そ、そうなんだ・・・。」

「ごめんね。」

「あ、あのさ、それじゃ、今日の放課後、時間ある?」

放課後・・・。 よく考えたら放課後の方が時間の縛りがない。
昼休みという決められた時間内の方が、自分の動揺を悟られずに済むような気がして、少し後悔していた。
それでも、ここまできたらしょうがなく、腹をくくる。

「うん、放課後は大丈夫だよ。」

「良かった。 それじゃ、放課後少しつき合ってくれる?」

「解った。」

「それじゃ、また後でね。」

朝は、そうして別れた。

放課後、いよいよ篠崎先輩とのことを打ち明けられるんだろうな・・・、そう思うと授業に全く身が入らない。
このまま放課後までおあずけの状態でいるのは、返って辛い。 昼に率直に聞こうかとも思ったけれど
結局何も言えずに、昼が終わり、放課後を待った。

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