『 Dummy:ダミー』 |
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目覚めると、いつも学校に行く時に起きる時間だった。 習慣が身についているのは仕方ない。 ベッドから起きあがろうとしたとき、母親が部屋に入ってきた。 「今日も学校休む?」 「今日まで休みたい。」 「そうね、昨日からほとんど何も食べてないから、このまま学校に行っても倒れるわね。」 「ごめんなさい。」 「今日はゆっくり休んで、明日は学校に行くのよ?」 「うん。」 「そういえば、昨日久美ちゃんがお見舞いに来たわよ。 もしかしたら今日も来るかもね。」 「・・・。」 「少しでもいいから、今日は食べなさいね。 起きられる?」 「うん、あとで行く」 「学校には、連絡しておくから。」 「ありがとう。」 母親が部屋を出てから起きあがって、携帯を手にする。 昨日、帰った後にしたメールらしい。 “ケイ、体調はどう? 無理しないでゆっくりしてね。 早く元気になってね。 “ 今は、久美の優しさが辛い。 その日、これ以上母親に心配を掛けたくなかったので、無理にでもご飯を口にした。 今日で気持ちを整理しよう。そして、明日学校では普段通りのフリをしよう。 そう心に決めていた夕方、また久美が見舞いにやってきたことで、決心が崩れる。 その時、前の日と同じようにまた寝たフリをしていたけれど、今日久美はそれで帰らず、部屋に来た。 2日もうちに来てくれたのに、そのまま帰ってもらうのは申し訳ないと、母親が部屋に上げたのだ。 私は当然また寝たフリを押し通すつもりだった。 消えていた部屋の電気をつけ、久美が部屋に入ってきた。 「ケイ・・・?」 部屋に背を向け布団を被り寝たフリをする。 背中で久美の声を聞く。 お願い、近づかないで。 帰って・・・。 心で念じるのに、徐々に久美の気配が近くなる。 ベッドに腰掛け、久美が私の髪にそっと触れているのが解った。 「ケイ・・・、寝てる?」 久美には寝たフリをしているのがバレているのかもしれない。 でも、それでも私は寝たフリをするしかなかった。 結局、しばらくして私が本当に寝ていると思ったのか、久美は何も言わずに部屋を出た。 もう限界なのかもしれない。 私は明日、久美の話を聞く覚悟を決めた。 |
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