『 Dummy:ダミー』
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ザワザワザワ・・・・・

教室の中が朝から妙に騒がしい。

何かあったのかな?と思いつつも、とりあえず席に着く。

鞄からとりあえず1時限目の数学の教科書を出そうとすると、

「ねぇ、ねぇ、吉沢さん!!」

普段あまり接点がないクラスメイトの3〜4人に机の周りをぐるっと囲まれる。

「な、なに?」

話すことすらあまりないクラスメイトにいきなり囲まるという異様な雰囲気に思わず身を固くする。

「ねぇねぇ、西山さんから、聞いているんでしょ?」

ん? 久美に何かあったの??

久美は中学からの同級生で、一番の親友。
最近、この親友という響きに若干複雑な気持ちになることあるけれど、まぁ、それは置いておいて。

親しくもないクラスメイトから、突然久美の事を聞かれ、少し動揺してしまう。

「久美が一体どうかしたの??」

「えっ? 吉沢さん知らないの? 朝からみんなその話題で盛り上がってるのに。」

「だから、一体なんのこと??」

「西山さんが、隣りの聖陵高校生徒会長、篠崎先輩と一緒にいるところが目撃されたのよ!!」

聖陵高校というのは、うちの高校の隣りにある名門男子校。
しかも、その生徒会長は、秀麗眉目、成績は学年トップでありながら、スポーツ万能。
その上、家は有名会社の社長と来てるから、否応でも有名人。

その辺を歩いているだけで、気が付けば人だかりができるほどの有名人な篠崎先輩が
久美と一緒に?? そんなハズない! 久美からそんな事、一言も聞いたことがない!
久美が私に隠し事をするハズがない!!

「そ、そんなハズない! だって、久美からそんなの聞いた事ない!」

思わず立ち上がり、大声で否定してしまう。
その声が教室内に響き渡り、ハッと気が付いた時には、クラス中の視線を浴びていた。
慌てて座り、自分を囲んでいたクラスメイトに慌てて小さめの声で改めて話しをする。

「あっ、えっと、本当に久美からは何も聞いてないから知らない。」

「そ、そうなんだ・・・。 え、えっと、ごめんね、変な事聞いて・・・。」

私の動揺を見て、何も知らないことを確信したクラスメイトはバツが悪そうに私の机から離れていった。

久美と篠崎先輩が・・・。

久美とは去年は同じクラスだったのに、2年になった今年はクラスが別になってしまった。
でも、クラスが別になったからといって、私たちの関係が変わる事なんてなくて。

今朝も一緒に学校に来たのに。
さっきまで一緒にいた久美は、いつもと何も変わらなかった。

だからさっきの話しは、きっと人違い。 そうだ、きっと人違いなんだ。
自分にそう言い聞かせながらも、小さなひとかけらの不安が私の胸に刺さっていた。

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