『Cross roads』
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「と、と、朋美??」

和美の驚きととまどいの声が遠いところから聞こえる。

ん? あれ? あっ、私寝ちゃったのか。

ゆっくりと目を開けると、私の横で、おろおろとした表情の和美の顔があった。
寝起きで半分寝ぼけながら、和美に声をかけた。

「あっ、和美起きた? どう? 調子は?」

「あっ、いや、えっと、随分良くなっているとは思うけど、、、というか、朋美なんでここで寝てるの??」

和美はしどろもどろで、目が宙を漂いながら今の現状を知るべく私にそう聞いてきた。
あっ、和美を抱き寄せながら寝ちゃったんだった・・・。
それで、和美が驚いている訳ね。

「あぁ、和美のお昼を作っていて、できたから呼ぼうと思ったら、
 すごく気持ちよさそうに寝ちゃってて。
 寝顔を見ていたら、また和美が泣いていたから。
 心細いのかな?って思って横で見ていたら、私も眠たくなっちゃって。」

私は事の流れを簡潔に説明して、気恥ずかしくなり、起きあがって台所へ行った。

作りかけの煮込みうどん再度温め、最後に卵を落として完成。
病人食とは言え、簡単すぎる料理なのに、和美は満面の笑顔で美味しいと言って食べてくれた。

1人前をぺろりと平らげ、病院からもらってきた薬を飲んで和美はベッドに落ち着いた。
私は台所の片づけをすませ、帰り支度をする。

「今日は本当にありがとう。 気を使わせてごめんね。 お礼は元気になったらするから。」

和美はベッドの中から、感謝の気持ちを伝えてきた。
私は静かにベッドに近づき、ベッド脇に座りながら

「このくらいの事は何でもないの。和美が弱っているのを放っておけるわけないじゃない。」

真剣な気持ちで和美にそう呟いた。 これは私の偽りのない本心。
でも、あなたにとって重たい存在にはならない為に、本心は言わない。
私が真剣に言った言葉で、和美が目を逸らさず黙っている雰囲気が耐えられず

「元気になったら、また泊まりにくるから、よろしくね?」

最後に冗談を込めた笑顔で、雰囲気を和ませた。

今日は和美が思ったよりも元気になった事が解ったから満足。
これ以上いたら、和美を疲れさせてしまう。

「それじゃ、帰るね。 お邪魔しました。」

私はそう言って、ベッドから立ち上がり玄関へ向かおうとした。

そのとき・・・

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