『Cross roads』
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料理といっても、ただ、だしを取ってうどんを煮込むだけ。
和美が食べられそうか、聞く為に、いったん火を止めて、和美の様子を見に行く。

「和美? どう? 食欲はある?」

そう声を掛けても返事がない。

あら、寝ちゃった?
ベッドに近づき和美の顔を見ると、ぐっすりと寝付いている。
病院に行って疲れちゃったかな? そう思って寝顔を見つめていると、
また和美の目元から涙がこぼれ、頬を伝って落ちる。
そっと手を添えて、涙を拭う。

何か不安な夢でも見ているのかな。
そういえば、さっき急に泣き出したのは、何かあったのかな?

少し前に、突然泣き出した和美を思い出す。
一人で体調が悪くなったことで、不安におそわれたのだろうか。

こんな心細そうな顔で寝ている和美を見ると、押さえていた気持ちがまたこみ上げる。

和美、私がいつでも側にいるから。
私が包んであげるから、悲しそうな顔をしないで?
もう、泣かないで。

私は涙を流しながら寝ている和美の脇に体を横たえ
顔を近づけて、和美の涙の流れた跡にそっと口づけした。

和美の体を布団越しに抱き寄せ、和美の髪にそっと触れる。

心なしか、和美が安心した表情になる。

それを見て私も安堵した途端、どっと疲れが押し寄せてきた。
この数日間、和美の容態が心配でいてもたってもいられなかった気持ち。
避けられた? 疎まれた? そんな不安を抱えていたけれど、
和美の安らいだ寝顔を見たことで、私の張りつめていた緊張も一気に解けた。
疲れと共に眠気が急に押し寄せてくる。

和美の安らかな寝顔に満足しつつ、私も暖かい眠りについた。

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