『Cross roads』
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朝、会社へ出勤し更衣室で着替えながら、つい和美のロッカーを目で追う。
大事を取って今日は休むとあったけれど、本当に大丈夫なのか、やはり気になってしまう。

始業のチャイムが鳴り、パソコンを立ち上げて仕事を始めると、ふと和美のところの課長が
和美の行き先予定表になにやら書き込んでいるのが目に入る。

今日休むことを連絡したからだろうか?

一応、確認しようと課長が書込み終わり、離れたのを見計らって書き込まれた内容を
確認しに行く。
そこには、今日だけではなく、今週1週間年休取得を現した記載がされていた。

和美は、今週中休み?? 随分良くなったんじゃなかったの??

私は無意識に和美の課長のところへ行き、どういう連絡があったのかを訊ねた。

“本人は、明日まで休むと言っていたんだが、休みも余ってることだし、ゆっくり治すように
 私が言ったんだよ。そうしたら、お言葉に甘えて今週やすみますとの事でね。“

課長の言葉を聞いて、少しホッとする。
でも、和美の体調が良くないことには変わりない。 課長にお礼を言って職場を離れる。
厨房へ行き、携帯から和美にメールをいれようとしたけれど、指が動かない。

昨日何度も打ったメール。
何度も掛けた電話。
返信をもらってから、電話を掛けたとき、電源が切られていた事実。

私の心配は、疎まれている? 私の頭の中にそんな疑問が大きく生まれる。
私は避けられている・・・? 

そんな不安に押しつぶされそうになった時、携帯が鳴る。
慌ててみると、和美からだった。

『朋美へ

 おはよう。なんか体調がまだ今一つなので、休みます。
 そんなに酷いわけではないのだけども、年休が余ってるからと課長に言われたし、
 中途半端に行ってまた周りに移してしまうも悪いので、今週一杯休みます。

 心配掛けてごめんね。 それじゃまた。
                                        和美』

和美からのこのメールが、押しつぶされそうになった不安から解放してくれた。
良かった、避けられてはいない。
そう思って、すぐにメールの返信を打ちかけて手を止める。
過剰に心配すると、本当に疎まれるかもしれない。

私が心配することで、かえって和美にストレスを与えてしまうことが怖くなり、
短い1行だけのメールを返した。

「無理をしないでゆっくり休んでね。」

その日、私は和美からのメールが来ない限り、メールも電話もしないことにした。

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