『Cross roads』
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「和美、体調はどう? 食欲とかある? お昼食べられそう?」
なるべく疎まれないように、最低限の事を聞いてみた。

「どうにか、お客さんから連絡があったから、今日はもう帰るね。 ごめん、お先に。」

私と目を合わせることなく、帰り支度をして和美は職場を後にした。
よっぽど辛いのか、それとも・・・。 それ以上の事を考えたくはなかった。

一人で昼食を取る。
珍しいことではないのに、なぜか不安と心細さが胸を占める。
和美は大丈夫なんだろうか。 本当に風邪なんだろうか?
家で一人で辛いんじゃないだろうか?

悪い事ばかり頭に浮かぶ。
何も言わず、職場を後にした和美の背中を思い出すと更に不安が募る。

午後の開始のチャイムを聞いて我に返り、仕事を始める。
仕事をしながら和美の容態が気になる。

お茶の時間に携帯メールを入れる。
無理をしないでゆっくり休んでと一言書いた短いメール。

仕事をしながら返信を待つけれどいっこうに来ない。
寝ているんだろうか・・・。 それとも、メールを打てないくらい辛いのか?

午前中よりもさらに長く感じた午後の仕事が終わる。
返事がないことが気になり、再度メールを打つ。

大丈夫なのか、何かあったら連絡するようにと。

家に帰ってもまだ返信が来ない。 家で倒れてはいないだろうか??
不安になって、とうとう携帯に電話を入れる。

数度の呼び出し音の後、“ただいま電話にでることができません。”という留守録メッセージ。
携帯を見ていないだけなのか、携帯に出られない状態なのかが解らない。

留守番電話には何も入れずその場で切り、また1時間後に掛けてみる。

やはり、留守録メッセージになる。

電話をやめてメールを打つ。

倒れているのではと不安になり、再度、心配なので、もし気付いたらメールくださいと書いた。

そのメールを出して2時間過ぎた。 やはり返事はない。
もう23時過ぎている。 今から和美のマンションに行こうかと悩んでいると、携帯が鳴る。

慌てて確認すると、和美からのメール着信だった。
良かった・・・。 心からほっとした。

メールにはぐっすりと寝てしまい、携帯もバックに入れっぱなしだったから
気付かなかった。 明日は大事を取って休むと書いてあった。

私はすぐに返事を書いた。無理をしないでゆっくり休んで欲しいことと、
明日会社帰りに寄ることを書いた。

しばらくしてから返信が来た。

メールには、私の心遣いの感謝が書いてあったけれど、その後には、
風邪を移してしまうと悪いし、ぐっすり寝たから随分良くなったから大丈夫だと書いてある。

遠回しに見舞いを断られたことで避けられているような不安がよぎる。
本当に少しでも体調が良くなったのかを聞く為に、思い切って携帯に電話を掛けてみる。

そんな私の想いとは裏腹に、携帯が繋がらないという機械的なメッセージが私の耳元に流れていた。

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