『Cross roads』 |
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(いかないで・・・。) 私は立ち上がろうとしていた和美の手を取った。 「えっ?」 驚きの声をあげ、不意に私が手を掴んだことでバランスを崩して、和美は私の前に倒れ込む。 薄暗闇の中、和美の瞳が驚きで私の目を一点に見つめているのが解る。 (お願い・・・。 行かないで・・・。 側にいて・・・。) 気持ちを込めて私は和美にいつもねだっている言葉を口にした。 「和美、、、キスして。。。」 私が和美を頼り、甘え、そして許しを乞う時に、親愛のキスを求めていた。 だから、今日も和美の許しが欲しかった。 掴んでいた和美の腕がビクンと震え、動揺していることが解る。 (お願い・・・、) 私は切ない想いで和美を見つめ続けていると、その顔が私に近づいてきた。 いつものように、和美が私の頬に親愛のキスをしてくれる。 親愛・・・、違う、 お願い、 お願い・・・、 今日だけ、今日だけでいいから、1度でいいから、あなたの唇を私に・・・。 私は近づいてきた和美の顔を両手で包み、頬に近づいてきた唇を強引に 私の口に重ね合わせた。 何がそうさせたのか解らないけれど、衝動的に私は和美の唇を奪った。 唇が重ね合った一瞬、目の前に、瞳を見開いた和美が私の瞳に写る。 一瞬の出来事だった。 和美は驚いて、あっと言うまに飛び起きて私から離れていった。 暗闇の中でも解る。 和美は何が起きたか解らないまま、固まっているのだろう。 ごめん、和美ごめんなさい・・・。 私は謝りながらも、一瞬感じた和美の唇の柔らかさの余韻に浸りながら夢の中に落ちていった。 夢の中には、和美がいた。 切ない顔をしながら、和美は私に近づいてくる。 そんな顔をされたら、また我慢できなくなる。 そう思っていると、私の気持ちを悟ったのか、顔を近づけ、和美は私の唇を奪った。 触れるだけのキス。 でも、長く長く、和美の唇を感じる。 苦しい、胸が苦しくて、息が詰まりそうだけど、ずっと感じていたい。 触れているだけのキスがもどかしくて、体が震えだし、腕がだらんと自分の体から滑り落ちる。 同時に、感じていた唇の感触が消えてしまい、和美もいなくなってしまった。 目を開けようとしたけれど、私の意志に反して、深く暗い眠りに落ちていってしまった。 |
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