『いつか、あなたの隣りに -浅野Side-』 |
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彼女は、しつこいぐらいにお礼を言って、玄関へと足を運んだ。 ドアを開けようと、ドアノブに手をかけた時、 「森田さん・・・。」 無意識に、私は声を掛けてしまった。 「はい?」 私は今、何を言おうとしたのだろう・・・。 無意識に言いたかった言葉を飲み込み、私は咄嗟に違う事を口にした。 「あっ、ん・・・、あと設計書の確認をお願いね。 もう少しだから頑張って。」 「はい、色々本当にありがとうございました。」 「気をつけて。」 笑顔で再びお礼を言って、森田さんは帰っていった。 私は、何を言おうとしていた? 『もう少し、ゆっくりしていって・・・。』 きっと、私は森田さんをもう少し引き留めたかったのだろう。 でも、できなかった・・・。 (だめだめ、これ以上近づいてしまうと、彼女の為にならない。) そう、私は彼女を見守っていればいい。 いつか、私を超えて、立派な技術者として巣立っていってくれればいい。 明日からは、いつもの上司と部下。 そう割り切る事にする。 全ては、いままで通りに。 翌月曜日、彼女は今回の仕事を無事終えた。 結果としては、かなり助け船を出した事になったけれど、彼女にとっては良い経験だったと思う。 あれから、森田さんは何か言いたげな目をしている時があるけれど、 私はあえて、触れずに話しかけることもしなかった。 それはいままで通りで、課長と部下の関係。 あとどのくらい、あなたの上司でいられるか解らない。 けれど、あなたの上司である間は、あなたをずっと見守っている。 あなたが経験を積んで、いずれ私と同じ所に来ることを、私は信じている。 いつか、私の隣りに来る日を、私は心待ちにしているのだから。 =おわり= 【あとがきと言う名の言い訳】 はい、リクエスト第1弾の浅野Sideです。 いやぁー、これは難産でした。(?) 浅野さんは、ちょっと私とは正反対のキャラだったので、なかなかうまく表現できなくて苦労をしまして。 今回は、ノーマル×ノーマルということで、浅野さんはその気(?)があるように思われがちですが、 実は、はやり自覚無しです。 なので、こちらの方は、あまり甘々っぽくならなくて、期待はずれ?な 感じになってしまったと思います。 いやはや、申し訳ない。 気が向けば、この続きを書いていくかも?です。 あくまでも、気が向けばですが・・・。 とはいえ、ここまで読んで頂き感謝です。 ありがとうございました。 2006/02/19 かじ |